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2009年 12月 07日
年の瀬の足音が聞こえ始めました。北アルプスの山小屋で受け取った手紙をはじめ、今年もまた、ささやかだけど温かな紙物語が私のまわりでつむがれたように思います。きっと、みなさんの身近でも、いろんなストーリーがうまれたことでしょう。
こんなふうにしみじみ紙のことを思うにつけ、紹介せずにはいられない本があります。それが『かみさま』。紙フリークにおすすめしたい一冊です。 こちらは、451ブックスが発行するフリーペーパー「FOR BOOK LOVERS vol.3」に寄せた『かみさま』のレビューです。 ----------------------------------------- (一部省略) ここに、子から親への伝言メモや、古本から活字を拾った名刺、ロシアのバスチケット、ミナ ペルホネンのタグなど、紙にまつわるさまざまなエピソードを集めた一冊がある。タイトルは『かみさま』。なにげない紙の中に、人と人の心をつなぐ紙さま=かみさまが、けなげに、静かに存在すると、ノンフィクションライターの大平一枝さんは冒頭で語っている。 大平さんが時間をかけ、各地で取材した約50のストーリーの中でも、料理ライター・渡辺ゆきさんと亡き父を結ぶ話は、とくに心を揺さぶる。独身時代に100日間ヨーロッパを旅した父は、週一回、家族にきちんと絵葉書を届けたそうだ。父が亡くなった後、渡辺さんはそれが見たいと家中を隅々まで探し回る。やっとでてきた葉書の束を何度も読み返し、自分の知らないころの父に触れていく。そして、いつか父と同じルートで旅することが彼女の夢になったという。 また、長野県にある「すみれ洋裁店」の紙物語も興味深い。店を改装するとき、かつての住人が使っていたと思われる布見本の台紙が、畳の下から現れた。現住人はそれをスキャンしてDMを作ったという。年季の入った紙の質感を伝えるのは、小林キユウさんの写真。一枚の紙の向こうに、見知らぬ者同士の間に生まれた絆が見えてくる。 読み終えたら、自分の部屋をぐるりと見回してしまうはずだ。普段なにげなく接している紙片に、かみさまが宿っているかもしれない。 ----------------------------------------- ◎かみさま/大平一枝 著 小林キユウ 写真/ポプラ社/1575円
by holoholo-b
| 2009-12-07 18:07
| 本・冊子
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